株式会社アービング 山口県内にハードオフ・オフハウス・ブックオフ・ホビーオフを展開しています

株式会社 アービング 代表取締役社長
繁光 哲雄(65歳) 山口市出身

























Q、どういった経緯で経営の道へ入られたのですか?

→もともと実家が山口県山口市で電気屋を営んでいました。大学進学で上京し、そのまま東京で就職。当時は不況で、そのあおりを受け家業の電気店の調子が振るわず、「3年で立て直して、また東京に戻る」という約束で実家に呼び戻されます。しかし、私の思惑は外れることになりました。事業は当初の予定通り3年で立て直したのですが、自分以外に誰も会社のマネジメントをすることが出来ないので、私が東京に戻れば倒産してしまう。そうなると、家業を継ぐという選択肢しか残されていなかったのです。

Q、もともとエディオンとFC契約を結ばれて家電量販店を運営されていた繁光社長ですが、リユース業を始めることになったキッカケは何だったのでしょう?

→アメリカに視察に行ったとき、チェーンソーだとか、ライフルだとか使えるものは何でも売っている、現地の質屋に目が留まりました。当時の日本の質屋と言えば、裏通りにあって、人の目を気にしながら入店して、というような胡散臭いイメージなのですが、私が見たアメリカの質屋は非常にオープンな業態で衝撃を受けました。平成11年後半、エディオンとのFC契約解消後のビジネス展開を検討していた頃、2〜3年前にビジネス誌だったと思いますが、創業したばかりの「ハードオフ」が小さい記事で紹介されていたのを思い出したんです。そのとき、アメリカでの体験と、「ハードオフ」の中古ビジネスモデルのつが、自分の中で明確に繋がって「これだ!」と強く閃いて、リユースのビジネスを始めるキッカケとなったのです。

Q、一般的には、業態転換といえば、大きな決断となると思いますが、そこまで思い切れたのはなぜですか?

→「ハードオフ」の創業者である山本 善政社長と話をするため新潟県まで出かけ、意気投合して「ハードオフ」のフランチャイズに正式に加盟することになります。電気店という小売業から、いわゆるリユース業への業態転換です。当時の電気店は、店頭でお客様から価格交渉されると「アレもつけます、コレもつけます」と実質的な値引き交渉を行なっており、その一方で、店側を信頼して値段交渉などされない、常連のお得意様に対しては、あまり値引きをせず販売していたのです。リユース業はお客様に対して、そうした「後ろめたさ」のないビジネスであることも当時の私にとって非常に魅力的でした。
 たとえば、弊社の従業員も、お得な入荷情報があったからといって、たとえ常連のお客様からのご要望であっても、それを教えるということは絶対にありません。なぜなら、店頭に来てくださったお客様だけが、それこそ「宝探し」感覚でお得な商品を見付けることができるという「フェア」な関係を大切にしているからです。それをご存知なので、毎日のように来店されるお客様もいらっしゃいます。リユース業界は、いまお伝えしたような「後ろめたさのないビジネス」であり、また、社会のゴミの削減を通じて「社会貢献」のできるビジネスなのです。

Q、リユース業とは何なのか? それから、リユース業界の特徴を教えてください。

→「リサイクル」は再資源化するのに電気など膨大なエネルギーを使用しますが、リユース(再使用)は本当の意味でエコな取り組みです。これは世界規模、地球規模の取り組みです。もともとヨーロッパなどキリスト教圏では、教会という存在がリユース業の代わりに、これに取り組んでいたりしますが、日本ではそれに該当する組織・団体がないので、日本においてはリユース業の拡大余地は大きく、消費飽和市場の日本でも引き続き大きな成長が見込める、極めて稀な業界だと言うことができます。

Q、いままでどんなことで苦労しましたか?

→最初は大変なことも多くありました。社会的な認知度が高くなかった転換期は、新しい事業を始めるからと、銀行に説明しても「なぜいまさら廃品業者のようなことを始めるのか」と見当違いのことを言われたりもしました。「絶対に1年で利益を出してみせるから融資を継続してください。1年経って駄目なら、資金を引き揚げてもらっても構いません!」とまで銀行の担当者に啖呵を切ったこともあります。実際、私が言った通りに利益が出て、それ以後は銀行も認めてくれるようになりましたけどね。当時はそれくらい世間の認知度が低かったわけです。

Q、リユース業界の展望を聞かせてください。

→いまや世間の人々の認識も変わり、7割の人が中古品の購入には抵抗がないという世の中になっています。でも一方で、自分が使ったモノを中古品として売ることに関しては、9割もの人々は経験がないという状況です。きっとまだ、「みっともない」とか「生活苦のように思われる」という意識が働いているのだと思います。この状況を考えてみても、まだまだリユース業には成長余地が残っていると思いませんか? ビジネスで一番成功しやすいのは、成長中の業界に身を置くことです。あなたにも是非この魅力的なリユース業に身を投じてほしいなと思っています。これからのリユース業界は、社会資本化が進んでいくと予想されています。私たちが子供の頃は、歩いてすぐの距離にコンビニエンスストアはなく、あのセブンイレブンでも朝の時から夜の11時までしか営業していませんでした。それが時代とともに、コンビニエンスストアが24時間営業となり、我々にとって、いまやコンビニのない生活なんて考えられない世の中になるなんて、当時の私たちからは想像もつきません。同じように、今後はリユース業界も、私たちの街の基本インフラとして拡大していくものと考えられます。

Q、リユースやリサイクルの看板を掲げる店舗も街中でよく見かけるようになってきました。「ブックオフ」、「ハードオフ」とライバル店舗との違いは何でしょうか?

→急拡大中の業界ですから、ライバル店舗もたくさん生まれてきています。ただ、あなたも「ブックオフ」「ハードオフ」に来店されるお客様と、他の店舗のお客様を比べてみると、なんとなく客層が違うと感じたことはありませんか? そうなんです。店内がゴチャゴチャしていて、比較的照明の落された店舗を好むお客様と、店内が明るくスッキリしていて、元気な接客の店舗では、必然とタイプの違うお客様が来店されるようになるのです。我々の店舗に来店されるお客様の中心は、隣近所のお客様です。働いているスタッフの隣近所から来店されるのですから、気持ちの良い挨拶をし、明るく元気に接客する必要があります。
 実は、我々が行っていることはリユース業界の「底上げ」と「一般化」なのです。ですから、同業者の新規参入は大歓迎。そうすれば、業界に競争が生まれ、より良いサービスへと進化していくでしょうから。もちろん、競争が生まれれば競争に負けて撤退するところもあるでしょうが、我々は負けないサービスを提供し続けていく自信は持っています。

Q、企業を支えているのは「人」だとよく言われます。株式会社アービングでは、スタッフさんのキャリアマネジメントをどう考えられていますか?

→昇給に関して、弊社では「キャリアパス制度」を導入しています。キャリアパス制度とは、企業の人材育成制度の中で、どのような職務にどのような立場で就任するか、また、そこに到達するためにどのような経験を積み、どのようなスキルを身につける必要があるか、といった道筋を明確にしておく制度のことをいいます。ここでいう「道筋」とは、企業の中での異動や昇進のルートのことです。弊社では、2、3カ月に回、上司との面談があって、そのなかでキャリアシートにもとづいて自分に足りているところ、足りていないところのすり合わせを行ないます。コレとアレが出来るようになれば次のランクに上がれるよ、など人事評価で差別が発生しないように、「フェア」であることを心掛けています。ただ、我々は「フェアではあっても平等ではない」ということも同時に言っています。

Q、具体的に、現場ではどのような育成方法が取られているのですか?

→スタッフ育成の方法に関しては、主に2通りあります。いわゆるOFFJT(座学)については、店舗を休みにして行う本格的な研修は年に回ほど実施します。でも、ほとんどは現場でのOJT、いわゆるオンザジョブトレーニングの形で、先輩スタッフと一緒に現場でやりながら覚えてもらうことが中心となります。分からないことは丁寧に教えますし、知識を深めたい方に対しては、本部がすぐに対応します。基本的に、興味のない人に無理やり知識を詰め込ませるようなことは行なっていません。なぜなら、興味がなければ人間は憶えることは出来ませんから(笑)。両者にとってその時間が無駄になってしまいます。「ハードオフ」や「ブックオフ」の仕事は1人で役の仕事です。買い取り・商品生産・販売という風に、商売の最初から最後まですべてが経験できる仕事です。だから、本気でやる人にとってはとても面白い仕事だと思います。但し、それが苦痛な人もいるでしょうね。

Q、リユース業は本気でやれば面白い仕事とのことでしたが、この仕事の「やり甲斐」はどこにあると思われますか?

→一般的な小売業やサービス業と違って、リユース業界で働くスタッフは、単に若ければ良いというわけではありません。なぜなら、業界知識や商品知識を得ることが仕事にとってプラスに働くので、本人が本気で頑張れば、長く働いた分のキャリアがそのまま仕事に活きてくるからです。ただし、商品知識はそんなに簡単には得られるものではありません。また逆に、オタクの方のように、知識が豊富過ぎて、一般的なお客様の目線で商品を見られなくなってしまう事もあります。私の個人的な見解としては、やればやるほど色んな商品の原価がわかるようになったりしてすごく面白いと思いますよ。

Q、ちなみに繁光社長、ご趣味は何かありますか?

→私に趣味というものがあるとすれば2つだけ。1つは文字を読むこと。もう1つはゴルフ。下手の横好きですけどね。趣味があるとしたらこれぐらいでしょうか。だから、ワーカーホリック(仕事中毒)なのかもしれません(笑)。いまでも丸日休みを取ることはありませんし、朝からゴルフがあっても、そのまま会社に寄って、会社の気になる数字をチェックしたりしますから。会社や現場の問題について、「どうやって改善しようか?」、「どうやって解決しようか?」、そんなことばかり考えています。きっと仕事が楽しくて仕方ないのでしょうね。

Q、最後に、新しく入ってくる方々へのメッセージをお願いいたします。

→新人スタッフさんには、いつもこう言っています。日、3カ月、1年、年のスパンで仕事について考えてみてくれと。なぜなら、100人いれば、100通りの価値観があるので、アービングに合う、合わないが絶対にあるからです。会社として、働く「環境」は最大限整備しますが、こちらの一方的な価値観を押し付けるわけにはいかないので、節目節目で自分の価値観と照らし合わせて、よく考えてみた方がお互いの為に良いということです。
 一般的に、働き始めて3日もあれば、生理的にその職場が合う、合わないかは分かります。そして、日頑張れたら、次はカ月頑張ってくれと。カ月働けば、仕事の概要がわかってきます。そこでもう一度続けるかどうかを考えてみてくれと。次のタイミングは年。年も働けば、この会社全体や仕事全体のことがだいたい把握できます。だから、そのときに、この会社で働いていくのかどうかを再度判断してほしいですね。そして、年頑張れば、ほぼこの業界のことがわかるようになるでしょう。この3日、カ月、年、年のスパンで考えてみることを伝えています。大切なことは、このタイミングの途中で辞めてしまうと、中途半端で勿体ないと思います。